前回のLessonでは、優れた予測モデルに共通する4つの原則「CATS(Consistency・Applicability・Transparency・Simplicity)」を紹介しました。その考え方を整理したものが、以下の4ステップです。
この構造を採用することで、「なぜその数字になったのか」を説明しやすくなり、予測の透明性を高めることができます。

Step 1:Define ― 市場を定義する
予測構築は、市場を正しく定義することから始まります。Chris Barker氏は、このステップを予測全体の土台と位置付けています。土台が不安定であれば、その後の分析や売上予測も信頼性を失ってしまいます。
市場定義には様々な手法があります。例えば、既存製品の短期予測では、過去の販売実績を利用するSales-Based Forcast が有効です。一方で、新薬や上市前の案件では、患者数を起点とするEpidemiology-Based Forcast が広く利用されます。
先日開催されたウェビナーでは、代表的な4つのアプローチが紹介されています。
- Sales-Based Forcast
- Epidemiology-Based Forcast
- Opportunity-Based Forcast
- Patient Flow Forcast

特にPatient Flow Forcast は、患者が治療ラインを移行していく流れを追跡するため、オンコロジーや希少疾患領域でよく利用されると説明されています。重要なのは、「どの手法が優れているか」ではなく、「予測の目的に最適な手法を選ぶこと」です。
Step 2:Trend ― ベースライン予測を作る
市場を定義したら、次に将来のベースラインを作ります。これがTrend Analysisです。考え方は非常にシンプルです。まず過去の市場データを分析し、「何も特別な出来事が起こらなかった場合、市場は今後どう推移するのか」を予測します。当社は、この予測をBaseline Forcast と呼んでいます。
例えば、
- 成長している製品は成長を続ける
- 縮小している製品は縮小を続ける という過去の傾向を将来に延長します。
ただし、単純な外挿だけでは不十分です。Andrew氏は以下の確認も重要だと説明しています。
- 一時的な売上急増や急減はないか
- COVIDのような市場構造変化はないか
- 季節変動を考慮すべきか
- 競合環境をどう捉えるか
こうして作られたBaseline Forcast が、後続の分析の土台になります。
Step 3:Event ― 将来イベントを重ねる
今回最も特徴的な考え方が、このEvent Overlayです。
Baseline Forcast は、「何も起きなかった未来」を表しています。しかし実際の市場では、多くの出来事が起こります。例えば、
- 新薬上市
- 適応追加
- 競合参入
- 臨床試験結果の公表
- 営業組織の変更
などです。 エバリュエートでは、これらをBaseline Forcast に直接組み込むのではなく、イベントとして独立管理することを推奨しています。その理由は透明性です。どのイベントが予測に影響したのかを明確にできるため、
- シナリオ分析
- 仮定の変更
- ステークホルダーとの議論
が容易になります。 Chris Barker氏は、「この仕組みによって得られる透明性が、貴社の売上予測において非常に有用であると、私たちは強く提唱しています。」と説明しています。

Step 4:Convert ― 患者数を売上へ変換する
最後のステップがConvertです。
市場規模や患者数を推計しただけでは、事業計画に活用できる売上予測にはなりません。そこで患者数をVolumeやRevenueへ変換していきます。 この段階では、
- 治療期間
- 投与頻度
- コンプライアンス
- SKU構成
- 価格
- 割引率
- Gross-to-Net などを考慮します。
Andrew氏は、製品によって必要な複雑さが異なることも紹介しています。
例えば、
- Loading DoseとMaintenance Doseが存在する製品
- 多数のSKUを持つ製品
- 無償提供プログラムを含む製品 では、より詳細な換算ロジックが必要になります。
一方で、上市前の事業性評価では、それほど細かな設計が不要な場合もあります。ここでも重要なのは、予測の利用目的に応じた適切な粒度を選ぶことです。
【デモ画面の一例】
ウェビナー後半30分頃では、実際の画面を表示しながらのデモもお見せしています。

予測は「結果」ではなく「構造」である
多くの人が予測を見るとき、まず最終売上に目を向けます。
しかし当社が伝えているのは、予測の価値は最終数字だけではないということです。
―市場規模が変わったのか。
―競合参入の影響なのか。
―適応追加による成長なのか。
―価格変化によるものなのか。
こうした背景を説明できる構造を持つことで、予測は単なる数字から、意思決定を支えるツールへと進化します。
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