製薬企業において売上予測(フォーキャスティング)は、製造計画から事業開発、投資判断、商業戦略まで、多くの意思決定の基盤となります。にもかかわらず、多くの企業が予測精度や予測プロセスに課題を抱えています。 では、なぜ予測は外れてしまうのでしょうか。
エバリュエートの売上予測支援部門に勤め、10年以上にわたり医薬品業界のフォーキャスティングに携わってきたAndrew氏と、フォーキャスティング支援・アドバイザリー業務を担当するKris Barker氏は、予測の失敗は「計算ミス」ではなく、「設計やプロセスの問題」であることが多いと指摘しています。
予測が外れる代表的な要因
先日開催された当社ウェビナーでは、製薬企業でよく見られる予測の課題として以下が紹介されています。
- モデルが単純すぎる:短期間で予測を作成しなければならない場合、市場や競合の変化を十分に反映できないシンプルすぎるモデルになりがちです。
- モデルが複雑すぎる:反対に、多くの仮定や計算式を盛り込みすぎることで、予測結果の根拠が見えなくなり、管理や更新が難しくなることがあります。
- データ不足:特に新薬や新規適応症では利用可能なデータが限られています。その結果、不確実性の高い仮定に依存した予測になりやすくなります。
- 目標数字から逆算してしまう:本来は市場や患者から予測を積み上げるべきところを、「来年は売上○億円」という期待値を起点にモデルを構築してしまうケースも少なくありません。講師陣は、予測は可能な限り独立かつ客観的に構築すべきだと強調しています。
- コミュニケーション不足:意外かもしれませんが、優れた予測であっても、説明の仕方によって失敗することがあります。社内のステークホルダーが予測の前提を理解していなければ、その予測は活用されません。
問題は数字ではなく「構造」にある
多くの予測改善プロジェクトでは、予測値を修正する、仮定を見直す、データを追加するといった対応が行われます。しかし当社が強調しているのは、「予測は単なる数字ではなく、意思決定を支える仕組みである」という考え方です。 つまり、予測精度を高めるためには、
- どのように市場を定義するのか
- どのように将来を予測するのか
- どのように将来イベントを反映するのか
- どのように結果を説明するのか
という設計そのものを見直す必要があります。
良い予測は「シンプル」から始まる
Andrew氏が繰り返し語るのは、「シンプルに始め、必要なときだけ複雑化するという考え方です。 」予測担当者は、競合、市場、患者セグメント、価格変動などの多要素をできるだけ多く反映したくなります。しかし複雑さが増えるほど、更新が難しくなる、エラーが増える、説明が難しくなる というリスクも高まります。優れた予測モデルとは、複雑なモデルではなく、必要な複雑さだけを持ったモデルなのです。
次回予告
予測を改善する第一歩は、予測値を見直すことではありません。まずは、「良い予測にはどのような原則があるのか」を理解することです。
次回のLessonでは、当社が提唱する予測設計の基本原則である CATS (Consistency / Applicability / Transparency / Simplicity)の考え方について解説します。
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